エ! 箕面市からですか?
それは、それは、素敵な女性でした。そして、地元の方ではなく、なんと箕面市在住です。電車を乗り継ぎ向日市まで、会議に、準備に、そしてイベント本番…と1時間近くかけて通われています。「なぜ、はるばる向日市に?」と伺うと、「向日市の竹林、素晴らしいですもの。こんな素敵な場所はないですよ。私のようなヨソモノが楽しませていただいて、ありがとうって気持ちです」と笑います。
小関さんを魅了し、日参させているのは、私たち乙訓地域が誇る竹林。そして、筍農家や竹工芸職人といった地元の竹のプロフェッショナルたち。特に、向日市の東洋竹工株式会社の大塚正洋会長とは、深い絆があるといいます。出会いはSNSのmixi。mixiは、今から10年以上前、facebookやインスタグラムがまだ普及していなかった時代のSNSですから…。「そう、もうずいぶん前よねー。大塚さんの『たけのこ』というハンドル名にピンときて、メッセージを送ったのが最初」。当時、小関さんは、滋賀県の近江八幡市で築120年の空き町屋を改装し、陶芸や竹工芸が体験できる工房を運営しつつ、地元の方々と放置竹林の再生や竹の多様な活用方法を開発する活動をされていました。そこから延ばした長いアンテナで、「畑に竹粉をいっぱい撒いて真っ白な畑があるんですって。竹粉は、肥料や土壌改良剤としていいらしいですよ」「岐阜県の石徹白って小さな集落では、ミニ水力発電をきっかけに地域づくりしていて面白いらしいですよ」と情報をキャッチしては、大塚さんとお仲間を誘い、速攻岐阜に出掛けていったのだとか。「向日市を代表するような会社の社長さんだなんて、全然知らなかったんですよ。お忙しいのにね~。いろんなことに付き合ってくれましたよ」
そんな縁があり、2時間以上かかる箕面市から近江八幡への道のりに限界を感じた小関さんは近江八幡の工房を閉じ、活動拠点を向日市に移されたのです。
物集女の竹林を舞台にワクワクするイベントが満載
向日市でのフィールドは、物集女西浄水場のすぐそばの竹林。昨年もここを整備し、竹の隠れ家を作り、ブランコ、滑り台、ハンモック…と子どもたちの歓声が響く遊び場を作りました。今年は、去年整備した場所の隣接地を整備していきます。倒竹、枯れ竹を片づけ、乾燥オカラや竹炭粉などを撒き、いい土に変えていきます。そんな地道な作業ですが、ただ黙々と汗を流すのではなく、何か「お楽しみ」をセットにしているのが小関流。
お邪魔したこの日は、「乙訓タケノコを学ぶ・体験・味わう」の2回目、「発酵タケノコづくり」でした。発酵タケノコとは、筍として収穫されず、2mほどに育った「穂先タケノコ」を使います。普通は食べたりはしないものです。皮をむき、拍子木に切って、茹で、15%くらいの濃さの塩で漬けます。この日の作業はここまででしたが、これを1か月ほど漬け込み、天日干しにすれば「干し発酵タケノコ」になり、塩抜きにより「発酵タケノコ」になります。つまりタケノコのお漬物です。お漬物ですから、乳酸発酵されたれっきとした発酵
食品ということになります。とはいえ、いったいどんな味? すっぱいの? 辛いの? 想像もできません。
「これは、純国産のメンマなんです。市販されているメンマはほぼ中国産。ごま油やラー油で味付けされているから、中華料理の材料というイメージでしょ。でも、材料はタケノコですからね。乙訓産の材料で作れるんですよ。これを和風だしで煮込むと本当に美味しいの!」
この日は、子どもたちも含め22人が集まりましたが、そんな小関さんの楽しい解説に、みんな「食べてみたい!」と。小関さんですから、出来上がったメンマを頂くイベントもちゃんと用意しています。1か月後の、発酵タケノコの料理教室です。講師は、東向日にある京料理の老舗・魚久のご主人、小森健護さんといいますから、なんと贅沢な!
そして、主目的の竹林整備。子どもたちを中心に発酵タケノコづくりをしている間にも、枯れて倒れた竹を伐り、片付ける作業が進んでいました。6月、7月と、昨年も竹の小屋づくりに協力してくれた京都建築専門学校の学生さんたちも参加して、竹林整備を一気に進め、8月には竹の家づくりが始まります。そう、竹の小屋を建てるのは、東洋竹工という竹工芸のプロと京都建築専門学校という建築のプロ。小関さんの、人脈の広さと深さには驚かされるばかりです。
「ヨソモノ」と「ジモト」の素敵な関係
小関さんから、次ぎ次ぎ送られてくるイベントの案内チラシ。毎月、いえいえ、子どもたちの夏休み期間になる7月、8月などは、毎週のように「何か」の講座やイベントが開催されます。お世話役の手配や様々な準備はたいへんなものでしょうし、そんな活動を支える財源は、文化庁やキリン福祉財団、全国税理士共栄会文化財団など厳しい選考を経なければ受けられない助成金です。そんな大仕事を、涼しくやってのける小関さんのパワーは、いったいどこからくるのでしょうか。
「私が、やりたいことを提案し、スケジュールも決め、『これでお願いします。一緒にやってください』って言えば、1つの変更もなく『やろか』になるんです。準備もみんながしてくれ、プロの指導者がちゃーんと来てくれて、指導してくれますからね。私は、少しもすごいことないんですよ。この地域に、私がやりたいことを実現させてくれるプロが揃っていて、願いをかなえてくれているんです。竹のまち乙訓地域ですから、ここで出来なきゃどこでできるの! ってことなんですよね」
小関さんの隣でニコニコ満面の笑みで聞いていた大塚会長も、「そやねん。この人に言われたらしゃあないからね」と。
「ヨソモノ」―もちろん、お仲間たちは、言下に「ちゃうちゃう!」と打ち消されますが、小関さんは、自らをこう称するのです。そういえば、少し前まで、地域の活性化を成しえる人の象徴として「よそ者、若者、ばか者」がキーワードとなっていました。この三者が、固定概念に囚われず、客観的にモノゴトを考えられ、停滞した町に喝を入れてくれる、というような意味あいで使われていたように思います。確かに、小関さんは、「ヨソモノ」でもあり、アイデアに溢れ、竹のまちの魅力を何十倍にも広げてくれる凄腕の仕掛人でもあります。
でも、たぶん、そんな斬新なアイデアを出してくれる「ヨソモノ」を、けっして孤立させず、一緒に動く「ジモト」の熱意や危機感がないと、成功はしないのだろうな、と思います。小関さんがつながる「ジモト」は、地元での信頼の厚いプロフェッショナルたち。そして、小関さんが巻き込もうとしているのは、地元で暮らす人たち。とりわけ、地元の未来を担う子どもたちです。
他のどの地域よりも、竹はまだまだ大きな産業である乙訓地域。整備の行き届いた美しい竹林はまちの宝であると、誰もが思っています。しかし、の美しさを「当たり前」だと思ってはいられない時代になりつつあることを、竹林の整備をほんの少しかじり思いました。
小関さんが企画してくれた竹を真ん中にした多彩なイベントが、この夏も目白押しです。竹の素晴らしさを見つけに、竹の素晴らしさを語る小関さんと出会いに、行きませんか。竹籔で会いましょう!
<インフォメーション>
籔の傍主催の3つのイベント ※いずれも参加費無料
- 問合せ・申し込みはメールで 「籔の傍」 yabunosoba@gmail.com
危険な竹林を愉しい竹林にイメージチェン
竹林整備をし、竹の家を建て、子どもたちが安心して遊べる竹林にするイベント
▶会場:向日市物集女町長野番地なし(向日市物集女西浄水場の裏山)
第1回/済
第2回/ 7月7日(日)10:00~16:00 竹林整備+竹食器づくり+タケノコカレー
第3回/8月4日(日)13:30-16:00 竹林整備+遊具づくり+竹の家つくり
第4回/8月18日(日)10:00~16:00 竹林整備+竹食器・竹筒ご飯炊き・+竹の家つくり
第5回/9月23日(日)13:30-16:00 竹林整備+遊具づくり+竹の家つくり
第6回/10月20日(日)13:30-16:00 竹の家完成+お茶会セレモニー
京都軟化式栽培と京料理と竹工芸
伝統文化を親子で学ぶ教室
▶対象:幼稚園・保育園、小学校(保護者同伴)、中高生
【京料理/だしの取り方、筍など京野菜を使った料理の教室】
1回目 7月14日(日)14:00~17:00 寺戸公民館調理室
2回目 9月1日(日)14:00~17:00 寺戸公民館調理室
【京都式軟式栽培/タケノコ畑の見学と軟化栽培の体験】
10月20日(日)14:00~17:00 物集女竹林
【竹工芸/竹林の間伐材を使った材料づくり、伐る・割る・剥ぐ】
1回目 終了
2回目 7月28日(日) 14:00~17:00 物集女竹林
3回目 9月8日(日) 14:00~17:00 物集女竹林
【発表会/11月 向日市市内で開催予定】
乙訓タケノコ学ぶ・体験・味わう講座
▶場所:成果発表以外は物集女竹林
4月~6月 終了
7月21日(日) 10:00~15:00 さばえ刈り・除草、乾燥タケノコを使った竹筒炊飯
8月18日(日) 10:00~15:00 夏肥、乾燥タケノコを使った竹筒炊飯
9月29日(日) 10:00~12:00 竹林整備
10月20日(日) 10:00~12:00 藁敷き作業
11月17日(日) 10:00~12:00 土入れ作業
12月15日(日) 10:00~12:00 青竹器・箸づくり
〃 13:00~16:00 迎春タケノコ料理
1月26日(日) 10:00~12:00 石拾い作業
2月23日(日) 10:00~12:00 竹林作業
3月29日(日) 14:00~17:00 成果発表展
(場所は向日市商工観光振興センター)