オシャレなマルシェのパイオニア「花子百貨店」
たぶん、バンビオ広場公園が一番華やかで活気に溢れているのが、春と秋に開催されている「花子百貨店」。いつもはガランとしたバンビオ公園に、彩とりどりの寄せ植えや、パリの骨董市のようなアンティークの小物、質のいい手作りのアクセサリー…、たくさんのお店が並び、そして、そのお店を目当てにたくさんの人がやってきます。この
「花子百貨店」をプロデュースしているのが「花子さん」こと、柴田政代さんです。
2005年にバンビオ広場公園ができ、その次の年には、長岡京市バンビオ広場公園等にぎわい創出事業実行委員会からの誘いで「花子百貨店」は始まりました。今でこそ、手作り作品を売るマルシェは人気で、毎月どこかで開催されていますが、10年以上も前ですから、それはそれは心トキメク特別なイベントだったに違いありません。そして、マルシェばやりの現在でも、やはり「花子百貨店」は特別で、ガーディナーや手作り作家さんにとってここに出店することは一つの目標になっています。
というのも、「花子」ブランドのハードルは、なかなか高いんです。簡単には「花子百貨店」には出店できません。出店を希望する人には、まず「1万円以上で販売できる作品の持参」という課題が出され、それが出来れば、柴田さんとの面接に臨みます。ここでは、8万円以上の売り上げが出せる自信のほどがヒアリングされます。尻込みする人には、「自信をつけてから来てください!」とキッパリ。それから、ママ同士で組んでの出店もNG。「ひとりで勝負しようと思わない人はダメですね」と、これまたキッパリ。
「常にお客様を引っ張り続けるためには技術があってこそ。安いから売れるのではなく、いいものだから売れるんです。それに、子どもや旦那さんと過ごす時間を削ってお店を出すんだから、8万円位は儲けて『焼肉行こう!』くらい言ってあげないとね!」と笑います。柴田さん自身が「お母さん起業家」だからこその愛のムチ。晴れて出店が決まっても、毎回、「花子百貨店」にはテーマがあり、出店者さんにはテーマに添った作品づくりという課題が出されます。これは、「前に売れたからって、同じことをしていてはダメ。新しいことに挑戦していかないとお客さんは離れます」という柴田さんからの教えであり、「創意工夫でどんなテーマでも自分なりの切口があるはず。チャレンジしたら伸びるんだよ!」という叱咤激励でもあります。「花子」というブランドを作りあげた柴田さんの仕事に対する向き合い方がここにあります。「花子百貨店」は、新人ガーディナーさんや手作り作家さんには「柴田塾」といってもいいものなのかもしれません。だからこそ、10年以上も色褪せることなく、キラキラ輝く憧れのマルシェであり続けることができるのです。
女性起業家のパイオニアとして
『ご主人がいない間のお店 花子』―、起業したばかりの頃、柴田さんの自宅ショップは、雑誌でこんな風に紹介されたと柴田さんは笑います。「だって、自宅のガレージをお店にしたので、主人が車に乗って仕事に行ったら植木鉢を並べて開店。夕方、主人が帰宅するまでに片付けて閉店なんですよ。でないと車置けないですもんね(笑い)」
そう、柴田さんは、乙訓の女性起業家のパイオニアとしても知る人ぞ知る存在です。彼女が自宅のガレージで花屋を開業したのは1996年。何か仕事をしたいと思っていたけれど、子どもはまだ3歳と5歳。じゃあ、自宅でお店を出せばいい。ガレージを使うならやっぱり花屋よね…と。そんな風に、軽やかに自宅ショップを始めたのですが、当時は、自宅ショップ自体も珍しい時代。特に「旦那様のいない時間だけ開店」というスタイルの妙が、『専業主婦から開業主婦に』『旦那様がいない時だけのショップ』…とキャッチーなコピーで表現され、あの時代の女性たちのハートを鷲掴みにしたに違いありません。そして、柴田さんのスゴイところは、小さな一歩からスタートさせた自宅ショップを、瞬く間に成長させ、「花子」ブランドにしてしまったことです。
自宅ショップスタートの頃は、立地的に、1日10人くらいしか人が通らない閑静な住宅街でしたから、全く売れません。「じゃあ、売りに出掛けよう!」と車に花を乗せてフリーマーケットへ出掛けるようになります。そして、そこに持っていったのは、プラスチックの箱や空缶にステンシルで模様を描いた手作りの鉢に花々を寄せ植えにしたもの。この手作りの鉢も、実をいうと、鉢を買う資金が足りなかったために思いついたアイデアでした。これが、当たりました! 当時、植木屋さんや花屋さんは、植木や花を売っても「寄せ植えを売る」という発想はなかったのです。そのうち、「鉢を持ってきて下さい。どんなものにも植え込みをしますよ!」と寄せ植え自体を商品化したところ、大ヒット。折しも、ガーデニングブームの到来という時代の後押しもあり、気がつけば、自宅ショップの前に200人もの大行列ができてしまう事態に。こうして、店舗を構えるまでに成長していったのでした。
「私ってようがんばってきたよね」と思えるイマ
「成功した女性起業家のように言われることも多いですが、私は成功例ではないんですよ。失敗の方が100倍はしているんだから」と言う柴田さん。そして、「でも、成功していないから、今も続けているんですよ」とも。
開業当初は、寄せ植えの花を卸売り市場に買いに行っても「主婦に売る花はない」と断られたり、マスコミに取り上げられるようになると「家族よりも商売の方を大事にするのか」という心ない手紙が送られてきたり、パイオニアだからこその苦労を重ねてきました。さらに、店舗を構え、従業員を雇い入れるようになると、多忙を極め、大きなストレスに晒される毎日。家族のことは常に大事にしてきたつもりでも、子どもたちと遊びに行った記憶がほとんどないことに気が付き、愕然としたこともあったといいます。
かくして、これまで4つの店舗を開業してきましたが、2013年には全ての店舗を閉めています。現在は、スタートと同じ、自宅ガレージに戻ってきました。
もちろん、仕事は続けています。完全予約制で少人数の教室や植え込み。そして、年に2回の「花子百貨店」など大事にしてきた選りすぐりの仕事を、丁寧にしていくスタイルに舵をきったのです。そして、減らした時間を、自分自身と家族のために使うことに決めました。女性というのは、50歳、その前後には、老いが見え始めた親との関係や孫という新しい家族の迎え入れなど、幼子を育てる時代とはまた違った難しさのあるライフステージを迎えるということです。柴田さん
が積み重ねてこられた20数年間を思えば、この選択の重さはいかばかりか、と。
しかし、今の暮らしを語ってくれる柴田さんは、なんとも軽やかで、清々しく、そして、「充実」という言葉がしっくりくる笑顔なんです。その「源」は何なのだろう…と思っていると、「ファスティング」という言葉がポロリ。「ファスティング」とは、酵素断食のこと。1週間程度、固形物は
取らず酵素ジュースなどだけで過ごす、今、人気の健康法です。未体験者から見ると、なかなかキツイ健康法に思えますが、柴田さんは、「食べない」ということを意図的に行うことは、「自分を許すことであり、自分を認めること。そして、自分を大事にすることだった」と言いました。ファスティングは、体重を減らすことが目的のようなイメージで
したが、実は内蔵を休ませてあげ、その機能を正常に戻そうというのが「本質」なのです。そして、「私って、ようがんばってきたよね」と、ごくごく自然に思うことができるようになったと言います。
がんばってきた22年間で、使ったお金は3億を超えるのだとか。これが「フラワーガーデン花子」の経済効果。続けてきたからこそ動かせたお金であり、誰かの役に立ったお金だから、「これが私の誇り」と笑いました。あっぱれです。カッコいい!
◆Information◆
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※次回の「花子百貨店」は場所:長岡京市バンビオ広場公園
日時:11月16日(木) 10:00~15:00 (予定)
【取材を終えて】
パイオニアだから立ち向かわざるを得なかった高い障壁。パイオニアだ
からこそ、その障壁を超えていく醍醐味。そこには、語りつくせないドラマがあったのだろうなと感じました。手作り作家を目指す若いママたちには、柴田さんの「仕事との向き合い方」から学ぶものは無限大な気がします。「花子百貨店」の存在の意味の深さを思いました。 (松野敬子)