経験で培った技術と専門知識を駆使し、顧客の要望に応える。
庭師は、主に個人宅の庭を設計・管理し庭園を製作する仕事で、現場経験を数多くこなさなければ一人前にはなれない仕事です。
大橋さんが独立したのは16年前。「自分の思うような庭をつくりたい」のが理由でした。修業時代に務めていたある会社は草木、茶花をふんだんに使う会社でした。次に転職した会社では、雑木を中心に庭をつくる会社で、どちらも親方の好みにあった庭づくりをしていました。親方が指示するイメージと違った庭づくりはできません。そこで30 歳で独立をしたのです。
ところが実際に独立してみると、自分の好みにこだわると、顧客への押しつけになると気づきました。「お客さんの好みに合ったものをつくることが一番大事なことです。お客さんが長期間、あるいは生涯見続けるのが庭です。そのような空間に、自分のこだわりを持ち込まないようにしています」と大橋さんは言います。
こだわりを持たないということは、つまり“どんな要望にも応えられる”ということであり、それは非常に難しいことです。植物の種類や性質、庭づくりに使う素材の知識はもちろん、建物とのバランスが重要になるため、建築に関する知識やセンスも要求されます。
「京の庭々」「Thi-da Garden」という二つの屋号は、和風から洋風まで、様々な案件に対応できるという表明です。和風と洋風の両様式に対する深い理解、使用する石材等に関する広範囲にわたる知識と技術力が大橋さんの強みです。現在、外構では40∼50件の案件を抱え、剪定など小さな現場を含めると、年間200件以上の現場を移動する、多忙な日々を送っています。
何百年も後世に残る、繊細でダイナミックな庭師の世界
株式会社リヴさんの本社「SU・BA・CO」にあるオリーブの木も大橋さんが管理しています。この木は、スペイン特産の品種で推定樹齢800年。園芸家・プラントハンターの西畠清順さんの協力により、2016年9月にスペインより輸送し植樹されました。葉が落とされてやって来たオリーブの木は、現在では木の芽がぐんぐん伸びて緑豊かなシンボルツリーに育っています。
大橋さんは、伸びすぎた枝や葉を切り取って樹形を整えて、長期間にわたり木の状態を管理しています。太く育てる枝といらない枝を見極め、切り戻しを行い、木がどのように生長していくかを頭の中でシミュレーションしつつ「どんなカタチにしていこうかな∼」と楽しみにしているそうです。
今後の夢を伺いました。
「ご縁があれば、本格的な和風庭園に携わりたいですね。お寺の庭園などは、何百年も残っているでしょう?自分の仕事が孫やひ孫の代になっても、何世代にもわたり残るというのは、壮大で、夢のあることです」 。生け花や茶道を学び、和の様式美を習得している大橋さん。夢の仕事は、いつかきっとやって来るのではないでしょうか。
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大橋良昭さん(庭師・造園士)
1972年 京都市南区久世で生花店を営む家に生まれる
1990年 京都府立桂高等学校園芸科を卒業後、3社の造園会社で12年間修行
2002年 独立し「Thi-daGarden(ティーダガーデン)」、「京の庭々」を開業
乙訓地域を中心に、洋風・和風の造園、外構工事の設計・施工・管理、ガーデン雑貨等の雑貨販売を行う
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京の庭々 /Thi-daGarden(ティーダガーデン)
京都府京都市南区久世中久世町1丁目54
TEL 075-924-2332 FAX 075-924-2322
[向日事務所]向日市寺戸町七ノ坪141 SU・BA・CO4階